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映画レビュー「フレンチアルプスで起きたこと」

By ono   2017年1月7日


以前にもたまにやっていた映画レビュー、不定期ですが、少しずつ紹介してみたいと思います。というわけで、今年最初のご紹介はこちら。

2017-01-07
「フレンチアルプスで起きたこと」
制作は2014年、スウェーデン、フランス、デンマーク、ノルウェーの合作映画です。

■あらすじ
スマートなビジネスマンのトマス、美しい妻のエバ、そして娘のヴェラと息子のハリーは、一家そろってフレンチアルプスにスキー旅行にやってきた。しかし、昼食の最中、目の前で雪崩が発生。その時にトマスがとっさにやってしまった行動が家族の「理想的な父親像」を崩壊させ、総スカンをくらってしまう・・・

■「理想のパパ」が崩壊する?
 レザルクというフランスのスキーリゾートが舞台になっています。ここで起きた一つの事件。それは、ホテルのオープンテラスで食事中の一家に、突如雪崩が襲いかかり・・・そうになるのです。その時、もう一つの事件が起きていました。一家のパパが、子どもや妻を尻目に、一人だけ屋内へ猛ダッシュで逃げ出していたのですね。ママは子ども達をかばい、逃げ後れるのですが、幸い雪崩は手前で止まり雪煙に覆われる程度で済んだのでした。ところが問題はそこからです。家族は微妙な空気に包まれて・・・何となく想像つきますよね。今まで良き父、良き母を演じてきたエグゼクティブクラスの家族だったのに、パパがあろうことか「家族を見捨てる」姿を見せてしまったんですもの。この残念感・・・。しかも、単に「格好悪い姿をさらした」だけには留まりません。命の危険時に自分だけ助かろうとしたことで、「信頼」ががた落ちです。
 ただし、ママだって素晴らしい人格者ではいられないのでした。ロビーで知り合った女性がリゾート地でてきとうな男性と不倫しているのを聞くとコンコンと説教を始めたり、「真面目だけど面倒くさい女性」の一面も。挙げ句、知り合ったカップルと夫婦で会話が弾んでいる最中に「夫が逃げ出した」話を2度も言い出して夫を困らせたり。さて、この信頼を失いかけている一家が、5日間の滞在中に家族の絆を取り戻せるのか、というのが映画のテーマになってきます。
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■監督「男の方が先に逃げ出すよ」
 さて、映画の公式ホームページに、監督がこの映画を作ることになったきっかけが書かれています。

この物語は私にとって忘れられない寓話から来ています。数年前のことですが、あるスウェーデン人のカップルが(実は私の友人ですが)ラテン・アメリカを旅していた時に、突然どこからともなく拳銃を持った男が現れて、彼らの眼前で銃を発砲したのだそうです。その時夫は本能的に逃げて隠れたのですが、妻は置き去りにされました。彼らはスウェーデンに帰国したのですが、妻は、アルコールが入ると、この物語を何度も何度も繰り返し話すのでした。

 その後監督が調べてみたところ、こうしたケースが多く報告されていることを知り、比較的多くの状況に置いて、家族やカップルの中で男性の方が先に逃げ出してしまう確率が高いということがわかったそうです。こうした話題がこの映画を作るきっかけになったようですね。

■あなただったらどうします?
 恋人や家族がいる方には格好の話のタネになる映画ではないでしょうか。「災害が起きたら?あなたは絶対、真っ先に逃げるわよ」と妻に言われたら、なんて答えます?いくら普段の日常からこつこつと徳を積み重ねていったとしても、こればっかりはどうなるかわかりませんものねえ・・・。「絶対僕が守る」とか言えば言う程うさんくさくなりますので、「怖いけど頑張るつもり」くらいに言っといた方が等身大な感じがして良いかもしれませんね。映画自体のテンポはワンカットが長めで非常にゆったりしており、雪崩のシーン以外は特段事件は起きないので、のんびり観れると思います。今回気づいたんですけど、引きで長めのカットってなんとなくドキュメンタリーを観ているような気分になりますね。物語を追う、というよりもこの家族の様子を覗き見しているような感覚で楽しめました。

■作品データ
原題 Turist
製作年 2014年
製作国 スウェーデン・デンマーク・フランス・ノルウェー合作
配給 マジックアワー
上映時間 118分
監督 リューベン・オストルンド

■ブログについて
 前回の更新が12月12日。ずいぶんと空いてしまいました。仕事やら何やらでドタバタしていたのもありますが、気持ち的にも「何となくブログが書けない」という状態が続いていることもあり、しばらくは「海外のくだらないニュース」記事はちょっとお休みしようと思います。


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