Archive for the ‘映画レビュー’ Category

2月

3

SF界の夢の共演?そんなバカな!「エイリアンVSアバター」

By ono



 友人3人で勝手に「映画サークル」をやってます。月に一度集まって、当番の人が持って来た映画を文句言わずに観るっていうのが活動です。1月はオノの担当だったのですが、12月に観た「スターウォーズ・エピソード9」への不満が高じてなぜか逆張りをしてしまい、超低予算のチープなSF映画を観ようと提案したわけです。そしたらサークルでもない知人がなぜか「観たい観たい!」と言い出し、ALTの友人ショーン(42)まで「ミニイキマスカラ!」とか盛り上がり、都合6人で鑑賞する羽目になりました。
 結果、意外と面白かったので(いろんな意味で)皆さんにも紹介しようと思った次第。
 それが、パクリ系超B級SF映画「エイリアンVSアバター(2011年の映画)」!

あらすじ
 201X年。地球に一体のエイリアンが潜入した。自由自在に姿を消せ、敵に乗り移れる能力を持つこの生物は、数々の惑星を滅亡させてきた強敵。そして、奴を追う、もう一人の宇宙人=アバターも地球人に変身し、捜索を開始した。一方、そんな事とは知らずに山にキャンプへやって来ていた大学生達は一人、また一人とエイリアンの血祭りに。人類根絶を企むエイリアンの戦いが始まってしまった・・・

 ↑冒頭、土星から飛来してくるエイリアンの宇宙船。「この映画のCGはこのレベルですから」という明確な説明ですね。アカウンタビリティ。もう一度言いますが2011年の映画です。


 ↑そして、エイリアンを追って地球の衛星軌道上へやって来た宇宙人「アバター」。ところで2009年の映画「アバター」におけるアバターとは、「遠隔操作できるリアルな人形(かなり語弊ありますけど)」のことで、皮膚が青いのは惑星パンドラに住む人種ナヴィ達なのですが、この映画では宇宙人自体が「アバター」という名前です。あと、この宇宙人は地球に自分の分身を送り込んで地球人と一緒にエイリアンを探すのですが、その際は肌の色が地球人と同じになっています。ちなみに戦う時は素手です。

 何か武器はないのかよ!と言いたくもなるんですけど、絵面的に好きなので良しとします。

童貞のタイラー、卒業なるか
 映画の本来の主人公である大学生は6人組。童貞のタイラーをこの機会に男にしてやろうと友人のジェイクが企画、女友達4人を誘い、山へとキャンプに出かけるのです。

 すごく等身大な悩みで良いと思います。前半はキャンプの様子がのんきに描かれるのですが、「ネイルが割れちゃう」とか言って全然仲間を手伝わないクリスタルとか、多分真っ先にエイリアンに殺されちゃうんだろうなーと思っていたら夜中に喧嘩してテントを出て行ってしまい、案の定そういう結果が待っていました。

起動するか、戦闘ロボ「ロボター」
 宇宙人アバターはろくな武器を持っていませんが、彼女は先に地球へ最新鋭戦闘ロボ「ロボター(本当にそういう名前なんです)」を降下させていました。ところが着陸の際に故障したらしく、ロボターを見つけて直さないとエイリアンに地球が侵略されちゃう!という状況になっているわけです。そしてようやく降下用カプセルに入ったロボターを発見、↓

 そこへ、そうはさせまいと襲いかかってくるエイリアン、それから、すでに殺されてしまった仲間たち!ロボターは無事に起動するのか、そして地球の運命は!ということでクライマックスを迎えます。ワクワクしますねハハハ。

モックバスターというジャンル
 ちなみにこの作品、当然ですが「エイリアンVSプレデター」のような映画だと思わせる前提で制作されているわけですが、こうした類の一連の映画を「モックバスター」と呼びます。「エイリアンVSアバター」を制作したトムキャット・フィルムズ社はこの手の映画専門な訳であり、そうなると気になるのがその他のラインナップ。少しだけご紹介しましょう。

メタルマン(2008年)

 説明の必要はありませんね。ロバート・ダウニー・Jr.のアレです。

キャプテン・バトル:レガシー・ウォー(2013年)

 以下同文。

アリス・イン・マーダー・ランド(2010年)

 もう何が来ても驚かないね!

映画の価値って、
 290億円もかけた、壮大なエピソードのラストを飾る超大作SF映画(スターウォーズのことを言うわけじゃないですけど)だとか、100億円もかけた超有名ミュージカルの豪華出演陣による映画化(別に猫が踊る映画のことを言うわけじゃないですけど)が思ったよりも満足感を得られない作品だったりする昨今、この手の映画が逆に新鮮でかつツッコミどころ満載で楽しめちゃったりするわけです。
 「言うて結局パクリ映画じゃん」と批判するのは簡単ですが、これらチープなB級映画群は、超大作SF映画と言ったってヒット作の続編を延々作っていたり、有名コミックの実写化だったり、有名ミュージカルの実写化だったりする中で、志の高さという意味ではどうなのよ?というアンチテーゼでもあったりするのかな、と思ったりするのです。
 バランスのとれた低カロリーで栄養的な食事に疲れた時、貪るようにえぐい色の駄菓子が食べたくなるような、そんな立ち位置の映画もたまに観てみると悪くないかもよ、というお話でした。個人的には今度「プレスリー対ミイラ男」なんかを観てみたいと思っております!では!

  

1月

5

2019に観た映画から、面白かったものベスト5をご紹介しますよ。

By ono



■新作ではありませんけれども
 ほぼ一年ぶりの更新になっているオノですこんにちは。劇場やNetflix、DVD・ブルーレイなどを含め、2019年に観た映画は50本強くらいなんですけど、その中かから個人的にオススメしたい映画をご紹介します。基本的には旧作で、新作や以前に紹介した映画は含みません。何か引っかかる作品があれば参考にしていただければなーと。


1)オオカミは嘘をつく(2013年・イスラエル)
 サイコサスペンス?バイオレンス・スリラー?とにかく先の読めない展開と拷問シーンが凄まじい、イスラエルの映画。
 何がすごいって主要キャストは↑の男性4人。それぞれ暴走し過ぎて任務を外された刑事、疑いをかけられた容疑者、被害者の父親、父親の父親。なんせイスラエルの映画なもので、知らない俳優ばかり。そのせいもあってか全然ストーリーの転がり方が掴めないのね。挙句の果てには、全員悪者に見えてきたりして、完全にミスリードに乗せられてるなーと思いました。
 少女の暴行殺人を犯したのは本当にこの男なのか?あまりにも常軌を逸した感じの少女の父親は大丈夫なの?この刑事は本当に主役なの?ちょっと痛々しいシーンが多いですけど、「嘘をついているオオカミは誰なのか」楽しんで観れました。オススメです。

■あらすじ
 森の中で起こったある凄惨な少女暴行事件。刑事ミッキは捜査を進めていくうちに、最重要容疑者を特定する。それは一見温厚に見える宗教学の教師ドロールだった。ミッキは不法な取り調べを行い、その動画を偶然ネット上に流されたために捜査は中止に。しかしドロールの追跡をやめないミッキ。そこに割り込んできたのは、犠牲者である少女の父親ギディだった―。(Amazonから)

 続きは下からどうぞ。
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2月

6

おかしな教授たちが繰り広げる珍クライムコメディ…?「いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち」

By ono



 新年早々っていうかもう2月ですけど、最高に面白い映画を観てしまったな、と。イタリアのコメディ映画がこんなに奇天烈で破天荒で楽しくてカラフルだって知りませんでした。そして、能力のある学者が欧州危機の中で職を追われているという実情も(ほんのちょっとだけ)見えたりして興味深いです。というわけで、今日はイタリア発の大ヒットコメディ映画「いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち」を紹介します。

あらすじ
 大学を追われ職を失った神経生物学者ピエトロ・ズィンニ(↑写真右)は、仲間たちと合法ドラッグ製造で一儲けを企んだものの逮捕されてしまう。刑務所に収監されたピエトロは、新型ドラッグの蔓延に手を焼いていたパオラ・コレッティ警部(↑写真左)から取引を持ちかけられ、犯罪履歴の帳消しと引き換えに捜査に協力することに。かつて合法ドラッグを一緒に製造した仲間たちが再結集、新たなメンバーも加わり、事件解決に挑むのだが…。(映画.comから引用)

癖の強い俳優陣にハイスピードなイタリア語
 というわけでこの映画。主役の神経生物学者ズィンニを中心に7人の落ちこぼれ教授がいるわけですが、法の網に引っかからない合法的なドラッグ製造がバレて逮捕。で、今度は逆に市場に増えすぎてしまった合法ドラッグを片っ端から回収し、成分を解明するという警察の捜査に協力することになるのでした。
 なぜ世界的に高名な教授たちが合法ドラッグなんかに手を染めたかというと、前述の通り、欧州危機のせいで経済が悪化し、多くの研究者や教授たちが職を追われ、真っ当な仕事に就けずにいる、というイタリアの事情を反映しているわけなのです。映画を作るきっかけになったのも、「大学で首席だった学者がごみ収集員をしている」という新聞記事を監督が見かけたことから始まっているんだそうです。それはさておき、基本的にこの教授たちが変わり者ぞろい。専門分野には詳しい癖に、常識は皆無だし協調性はないし、とにかくベラベラよく喋る。そんな癖の強過ぎる教授が7人集まったらカオスです。しかも海外に流出してしまったという能力のある学者3人を各国から呼び戻し、インテリマフィアは総勢10人に。
 彼らがまくし立てるハイスピードなイタリア語がまた面白くて心地良いのですね。四六時中言い争っているので字幕を追うのが大変ですけど、これはこれですごく新鮮。あまり観ないイタリア映画ということもあり、俳優陣も知らない人ばかりでこれもまた新鮮です。

実はシリーズ3部作
 さてこの「10人の怒れる教授たち」、実は3部作シリーズの2作目なのです。ズィンニたちが合法ドラッグに手を染めて彼らが逮捕されるまでが1作目「いつでもやめられる 7人の危ない教授たち」で、3作目にはラストを飾る「いつでもやめられる 闘う名誉教授たち」が控えています。1作目が本国でヒットした後、2作目が日本でも注目を浴びたせいで、本作からしか観ていない私のような人も多いみたいです。どうりで前半部分の教授たちの紹介シーンがやけにあっさりしていると思いましたよ。なので、全員集合した時点で「あれ、この教授、何専門の人だっけ」みたいになりますが、みなさんキャラが強過ぎるので、気にしなくても大丈夫(笑)。
 というわけでこの作品、3作目へと続きます。ご丁寧にエンディングで3作目のダイジェスト映像をぶっこまれたら、観ないわけにはいきませんね。窮地に追い込まれてしまったズィンニたちはどうなってしまうのか?真の黒幕の正体は誰なのか?
 早速私も観てみようと思います。楽しみー♫

”定義が曖昧だな”
 本作品は上映に先駆けて一部のシーンが公開されました。彼らが突き止めたあるドラッグの取引場所となっている倉庫の前でのシーンなんですけどね、こんな感じなんです。
「あの中だ。行こう」
「行って何を?」
「これも仕事のうちだ。行って奴らを阻止するんだ」
「何を”阻止する”のか漠然としてるな」
「定義が曖昧だ」
「どこが曖昧だ!中に入って言うんだよ、・・・えーと・・・”動くな警察だ”、とかなんとか」
「イヤだね、右翼が好きそうなセリフだ」
「”いい加減にしろ”はどうかな」
「・・・それだけ?」
「毅然として”い い 加 減 に し ろ !”って」
「・・・今思い出したんだけど、車のドアをロックし忘れたかも」
「マジか?運転手のくせに!」
「私の荷物はどうなる?」
「いちいちモメるな!子供の遠足かよ!」
 ・・・とまあ終始こんな感じ。キテレツで愛すべきキャラクターが満載のこの映画、はまればきっと他のシリーズ作品も観たくなると思います。他のレビューを見ていると、人によっては「何が面白いのか全くわからない」と言う方もいるようですので、保証はしませんが・・・。
 思えば大学生の時にいろんな教授を見ましたけど、教授って、本当に変わった人たちばっかりなんですよね。浮世離れしてるって言うか、学問以外はまるでダメだったり・・・。そう言うある意味「人外」な人たちの活躍を楽しむのが醍醐味ですね!オススメです!

主役のズィンニ役の俳優さんエドアルド・レオも出演している「大人の事情」も下に紹介しときますね。こちらはイタリアのアカデミー賞といわれるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で作品賞と脚本賞の2冠を受賞した作品。興味のある方は、是非。

  

12月

16

どんな人にも背後には育った環境やこれまでの人生、事情その他抱えきれないたくさんのものがあるのよね。「スリー・ビルボード」

By ono



 ↑のタイトル通りのことを思ったわけですけれども。生まれながらに善い人・悪い人というのはいないわけで、育った環境や地域、歴史、家族、その他山ほどの干渉があって現在のその人がある訳。そんなことを突き詰めていくと、どんな人にもその人なりの「理由」があってぶつかったりわかりあったような気になったりする。そういう人々の当たり前の話を、映画という短い時間の中で雄弁に語られると、それはもうしてやられたなって感じるのです。2017年の映画としてアカデミー賞で主演女優賞・助演男優賞を受賞した作品、「スリー・ビルボード」をご紹介します。

あらすじ
 アメリカのミズーリ州の田舎町を貫く道路に、3枚の広告看板(ビルボード)が設置された。そこには、地元警察への批判メッセージが書かれていた。「娘はレイプされて焼き殺された」「未だに犯人が捕まらない」「どうして、ウィロビー署長?」、と。7カ月前に娘を殺されたミルドレッドが、何の進展もない捜査状況を糾弾すべく、警察署長にケンカを売ったのだ。署長を敬愛する部下や、町の人々から抗議を受けるも、一歩も引かないミルドレッド。町中が彼女を敵視するなか、次々と不穏な事件が起こり始め、事態は予想外の方向へと向かい始める…。

脚本が素晴らしい、それ以上に役者の方が素晴らしい
 娘がむごい殺され方をしたのに、全く捜査を進めるつもりがないのは警察の怠惰だ、とミルドレッドは戦うのね。だけど、会ってみるとウィロビー署長というこの人、丁寧だし誠実な人柄。おまけに実は不治の病で余命も残り少ないのに仕事をこなしている、ときたら、警察のみならず街の人みんなから慕われているのです、当然。だけど、だからこそ、ミルドレッドは納得がいかない。いくわけがない。街の人には嫌われ、警官には嫌がらせを受け、孤立していく彼女。そこに、一つの事件が起きてしまい、事態は更に混沌としてゆくのです。
 ネタバレになるのでこれ以上は説明しませんけど、結果から言うと本当に素晴らしい映画でした。観終わった後、何とも言えない心地良い気分になるのです。あのクソムカつく警官も、忌々しい元DV夫のチャーリーも、ウィロビー署長も、みんなを愛おしいと感じるんですよね。冒頭でも書きましたけど、人物の環境や人となりがきちんと描かれていて、起きることすべてがリアルで親身に感じました。トラブルや事件で人は傷つき、憎しみは消せないけれど、それでも誰も悪くない。それがまた切ない。それが痛いほど伝わるのも素晴らしい演技あってこそ。

「取り残された白人」、ヒルビリー
 日本人の我々にはなかなか理解が難しいのが、アメリカの格差問題。この映画の舞台はミズーリ州にある架空の街エビングですが、架空ではあるけれど、ミズーリ州でなければならない理由があるのですね。それは、ミズーリ州が「貧しい田舎者」として差別される側にある白人、「ヒルビリー」の州だから。典型的なのが警官のディクソンですね。家が貧しく、学がなく、黒人は殴り、仕事もひどく怠惰。そんな彼を署長代理のアバークロンビーは「貧乏白人め」と言い捨て、彼は「差別するのか」と怒ります。ここ、英語では「mother-fucker/マザーファッカー(普通の?悪口)」なのに、字幕は敢えて「貧乏白人」としていました。ミズーリ州のヒルビリーが差別され、見下されているということを伝える必要があったのですね。
 そうしたミズーリ州の人たちを彼らのバックボーンも含めて真摯な?眼差しで描いているのもこの映画の素晴らしさだったと言えます。

ミルドレッド役の女優さんが格好良すぎです
 ↑前述のようなアメリカが抱える問題を浮き彫りにしているってことも映画の評価が高い理由の一つなんですけど、我々は結局、わかったつもりでいたとしても当のアメリカ人のように切実に感じることはできませんのでね。ここは、知ったかぶりを捨てて、素直にクライム・サスペンス及び人間ドラマを楽しむのが吉です。
 ミルドレッド役の女優、フランシス・マクドーマンドはこの役で主演女優賞を獲得。男前で格好良くて、渋くて、けれども悩みを抱えて葛藤があって、っていう女性を見事に表現していました。納得。
 この方、以前観た「ファーゴ」で女性署長のマージさんを演ってまして。これがまた男前で格好良くて優しくて、という、今回のミルドレッドともちょっとキャラがかぶるような素敵な署長を演じてます。しかもこの映画でもアカデミーで主演女優賞を受賞。さすがです。「ファーゴ」も以前簡単に紹介しましたけど、話の展開がどんどん転がってゆく予想のつかない展開で、本当にオススメですよー。

 そんなわけで、映画「スリー・ビルボード」の紹介でした。主演のマクドーマンドさん、存在感のある役をされてますので、是非「ファーゴ」や「あの頃ペニー・レインと」もご覧になってはいかがでしょうか。

  

10月

27

家族のあり方に答えはあるのかしらね・・・?映画「ギフテッド」

By ono



7歳の子供に教わる「本当の幸せ」
 私には子供がいないので偉そうなことは何一つ言えないわけですけど、一つ感じるのは、子育てに真剣に向き合っている人は素晴らしいなということです。そんなわけで、「家族」、「愛」、「人生」、「自分らしさ」生きていく上でとっても大切な問題を素敵に描いた映画「ギフテッド」を紹介します。

あらすじ
 フロリダで、ボートの修理をして生計を立てている独り身のフランク(↑写真右)。彼は、天才数学者だったが志半ばで自殺してしまった姉の一人娘、メアリー(↑写真中央)と暮らしている。メアリーは先天的な数学の天才児“ギフテッド”であることが知れると、周りは特別な教育を受けるよう勧めるが、フランクは「メアリーを普通に育てる」という姉との約束を守っていた。ところが、レベルにふさわしい教育をするべきだ、というフランクの母イブリンが現れ、親権問題で訴えられてしまう・・・(20世紀フォックスHPから

 メアリーの神童っぷりはものすごくて、祖母のイブリンがマックブックをお土産に持ってきて、「中に本がたくさん入ってるわよ、チャールズ・ジマーの”代数学の発展”とか」って言うと、「ああ、あの本大好き、今は微分方程式の方が好きだけど」とか言ったりするのね。恐ろしい7歳だわよ。
 イブリンは自分の娘ダイアン(=メアリーの母親)に熱心に数学の教育を施して、「ナビエ–ストークス方程式の証明」とか言う誰もまだ解いていない問題を研究させていたのだけど、ダイアンは一人娘のメアリーを残して自殺してしまったの。イブリンはそれを自分が原因だとは思わず、今度は孫のメアリーに同じことをさせようとする。だけど、フランクは姉だったダイアンの「普通の子供に育てて欲しい」という願いのとおり、特別なことのない子供らしい子供にしてあげたいと思うわけ。
人類の進歩を担う子供?
 二人の意見はもちろん合わなくて、イブリンはフランクから親権を取り戻そうと裁判を起こします。そこで自分の娘だったダイアンについてこう陳述するのです。
「彼女(ダイアン)は普通の人とは違い特別なの。そう言う人は特別な問題を抱えてる。彼女の才能は想像を超える、10億人に一人よ。
 母と娘の関係を超えて責任を負った。世界を変える偉大な発見をする頭脳の持ち主はラジウムより希少。彼らなしでは進歩はないの」
 それに対し、フランクはこう言うのです。
「ダイアンはメアリーに子供でいて欲しかった。普通の人生を。友達をつくり、遊んで、幸せに」
家族の幸せとは?
 劇中のメアリーが持つ頭脳は”10億人に一人”と言われてますから、我々がそんな子を授かる可能性はほとんどないので心配する必要はなさそうです。だけど、日々育っていく子供に何を教え、どう導くのか、何がその子にとって一番の幸せなのか、悩まれる方は多いんじゃないでしょうか。一度しかない子供時代を勉強だけで浪費させてしまうのは悲しい気持ちもあるでしょうし、かと言って将来落ちこぼれにはなって欲しくない。結局は子供が大人になって振り返ってみるまで、それが正しかったのかどうかは誰にもわからないですよね。
 劇中のイブリンは自分の理想を無理やり子供に押し付けている、人間味の足りない人物に描かれていますけど、彼女だってこれほどの逸材の能力が発揮されないで終わってしまったら、人類にとって損失だ、と言う思いもきっとあると思うのです。変な使命感というか。それもまた一つの考え方ですよね。7歳の子供が自分で正しい将来を選べるわけではないでしょうし、その結果には誰も責任を持てないのですから。
 さて、結局メアリーがどうなってしまうのかは、映画でご覧いただければ。メアリー役のマッケナちゃんの演技が素晴らしくて、可愛くて、賢くて、本当に素敵な女の子を演じてくれています。メアリーが泣くと自分ももらい泣きをしてしまう程に。ある意味役者としてのマッケナちゃんこそが天才なんじゃないの。

 そんなわけで、映画「ギフテッド」の紹介でした。「天才児」というテーマと言われて思い浮かぶ映画といえば、「天才スピヴェット」、「リトル・ダンサー」かな。どっちも素晴らしい映画なので合わせてオススメしときます。

  


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