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どんな人にも背後には育った環境やこれまでの人生、事情その他抱えきれないたくさんのものがあるのよね。「スリー・ビルボード」

By ono   2018年12月16日



 ↑のタイトル通りのことを思ったわけですけれども。生まれながらに善い人・悪い人というのはいないわけで、育った環境や地域、歴史、家族、その他山ほどの干渉があって現在のその人がある訳。そんなことを突き詰めていくと、どんな人にもその人なりの「理由」があってぶつかったりわかりあったような気になったりする。そういう人々の当たり前の話を、映画という短い時間の中で雄弁に語られると、それはもうしてやられたなって感じるのです。2017年の映画としてアカデミー賞で主演女優賞・助演男優賞を受賞した作品、「スリー・ビルボード」をご紹介します。

あらすじ
 アメリカのミズーリ州の田舎町を貫く道路に、3枚の広告看板(ビルボード)が設置された。そこには、地元警察への批判メッセージが書かれていた。「娘はレイプされて焼き殺された」「未だに犯人が捕まらない」「どうして、ウィロビー署長?」、と。7カ月前に娘を殺されたミルドレッドが、何の進展もない捜査状況を糾弾すべく、警察署長にケンカを売ったのだ。署長を敬愛する部下や、町の人々から抗議を受けるも、一歩も引かないミルドレッド。町中が彼女を敵視するなか、次々と不穏な事件が起こり始め、事態は予想外の方向へと向かい始める…。

脚本が素晴らしい、それ以上に役者の方が素晴らしい
 娘がむごい殺され方をしたのに、全く捜査を進めるつもりがないのは警察の怠惰だ、とミルドレッドは戦うのね。だけど、会ってみるとウィロビー署長というこの人、丁寧だし誠実な人柄。おまけに実は不治の病で余命も残り少ないのに仕事をこなしている、ときたら、警察のみならず街の人みんなから慕われているのです、当然。だけど、だからこそ、ミルドレッドは納得がいかない。いくわけがない。街の人には嫌われ、警官には嫌がらせを受け、孤立していく彼女。そこに、一つの事件が起きてしまい、事態は更に混沌としてゆくのです。
 ネタバレになるのでこれ以上は説明しませんけど、結果から言うと本当に素晴らしい映画でした。観終わった後、何とも言えない心地良い気分になるのです。あのクソムカつく警官も、忌々しい元DV夫のチャーリーも、ウィロビー署長も、みんなを愛おしいと感じるんですよね。冒頭でも書きましたけど、人物の環境や人となりがきちんと描かれていて、起きることすべてがリアルで親身に感じました。トラブルや事件で人は傷つき、憎しみは消せないけれど、それでも誰も悪くない。それがまた切ない。それが痛いほど伝わるのも素晴らしい演技あってこそ。

「取り残された白人」、ヒルビリー
 日本人の我々にはなかなか理解が難しいのが、アメリカの格差問題。この映画の舞台はミズーリ州にある架空の街エビングですが、架空ではあるけれど、ミズーリ州でなければならない理由があるのですね。それは、ミズーリ州が「貧しい田舎者」として差別される側にある白人、「ヒルビリー」の州だから。典型的なのが警官のディクソンですね。家が貧しく、学がなく、黒人は殴り、仕事もひどく怠惰。そんな彼を署長代理のアバークロンビーは「貧乏白人め」と言い捨て、彼は「差別するのか」と怒ります。ここ、英語では「mother-fucker/マザーファッカー(普通の?悪口)」なのに、字幕は敢えて「貧乏白人」としていました。ミズーリ州のヒルビリーが差別され、見下されているということを伝える必要があったのですね。
 そうしたミズーリ州の人たちを彼らのバックボーンも含めて真摯な?眼差しで描いているのもこの映画の素晴らしさだったと言えます。

ミルドレッド役の女優さんが格好良すぎです
 ↑前述のようなアメリカが抱える問題を浮き彫りにしているってことも映画の評価が高い理由の一つなんですけど、我々は結局、わかったつもりでいたとしても当のアメリカ人のように切実に感じることはできませんのでね。ここは、知ったかぶりを捨てて、素直にクライム・サスペンス及び人間ドラマを楽しむのが吉です。
 ミルドレッド役の女優、フランシス・マクドーマンドはこの役で主演女優賞を獲得。男前で格好良くて、渋くて、けれども悩みを抱えて葛藤があって、っていう女性を見事に表現していました。納得。
 この方、以前観た「ファーゴ」で女性署長のマージさんを演ってまして。これがまた男前で格好良くて優しくて、という、今回のミルドレッドともちょっとキャラがかぶるような素敵な署長を演じてます。しかもこの映画でもアカデミーで主演女優賞を受賞。さすがです。「ファーゴ」も以前簡単に紹介しましたけど、話の展開がどんどん転がってゆく予想のつかない展開で、本当にオススメですよー。

 そんなわけで、映画「スリー・ビルボード」の紹介でした。主演のマクドーマンドさん、存在感のある役をされてますので、是非「ファーゴ」や「あの頃ペニー・レインと」もご覧になってはいかがでしょうか。

  


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