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ろくでもない男の1日を丁寧に丁寧に描いた映画「アノマリサ」

By ono   2017年5月7日



アノマリサ
 記事が2週間ぶりとかになってしまいました。皆様のゴールデンウィークはいかがだったでしょうか。個人的にはちょこちょこと人との出会いがあった1週間でした。で、GW最後の日に観た映画がこちら「アノマリサ」。後で知ったのですが、監督・脚本を手がけたのはチャーリー・カウフマン。ご存知?あのキテレツな映画「マルコビッチの穴」で脚本と製作総指揮を担当した方です。そんな彼が脚本を書いたという本作、当然のように一筋縄では行きません。

■あらすじ
 カスタマーサービス界で名声を築き、本も出版しているマイケル・ストーン。私生活でも妻子に囲まれ恵まれた人生を歩んでいるかに見えたが、本人は自分の退屈な日常に不満を募らせていた。そんなある日、講演をするためシンシナティーを訪れたマイケルは、そこでリサという女性に出会う。長い間、すべての人間の声が同じに聞こえていたマイケルは、「別の声」を持つ彼女に魅力を感じる…。

撮影に2年間かかった?
 この作品、実は人形を使ったストップモーション・アニメです。なので1コマ1コマ、ほんのちょっと動かしてはまた撮影し、という気の遠くなるような作業を2年程経て制作されています。あまりにも動きが自然なので、一瞬コマ撮りアニメに見えるように作ったCG映画なのかとすら思いました。けれども、気になる点が一つ。

 ↑人形の顔、目の横などに分割線がありますね。これは、一コマごとに顔のすべてを作り替えていては大変なので、顔の上半分と下半分は別パーツにして、アニメーションの効率を上げているのです。同じストップモーションアニメ系の「ウォレスとグルミット」などでは分割線もきれいに消しながら制作しているんですが、本作ではあえてここを消さずに撮影しています。人形っぽいということが大事だったのかな、と思ったり。

この人こそ運命の人
 ホテルの部屋でお酒を飲むシーン。あらすじにもありましたが、マイケルは退屈な日常にどうやら病的とも言える不満を持っているようです。そのためか、彼以外の人物の声は全て同じ男性の声で聞こえており(たとえ女性の声でも)、自分以外の人間の顔も、全てが同じ顔に見えるのです。そんな折、ホテルの部屋の外から聞こえてきた一人の声だけが、いつもと違う、ちゃんとした女性の声。ひょっとしたらこれは運命なのじゃ・・・とマイケルはその女性の声の主を捜すために部屋から飛び出していくのです。

 この後どうなるかはネタバレになるので書きませんが、一つだけ衝撃的な事実がありまして、それはこの映画、人形を使ったストップモーションアニメでは史上初ではないかと思われる、濡れ場があります。何と言いましょうか、あえて人形で見せられると人間の営みなんて滑稽なもんですな。さてさて、初めて女性の声として聞こえてきた声の主はマイケルの運命の人なのでしょうか。彼の家庭は大丈夫なのか、翌日に控えた講演は無事にいくのか、そんなお話です。

救いはないけどそんなもんだよね、人間って
 20代前半の頃と違って、就職したり家庭を持ったりしてしばらく経つと、日々の日常なんてそんなに変化のない退屈したものになりますよね、たいていの人は。でもそれが許容できない人は熱い恋愛だとか、劇的な変化だとか、そういうものをつい求めてしまう。それが叶わないとストレスになり、本当の自分はこれで良いのかなどと自問したりして、自分探しが始まったりするわけです。で、旅先で出会った異性に異常にときめいて、これは奇跡だとか思っちゃったりするのよね。この映画もそうだけどさ。だけど人生ってそんな簡単に奇跡は起きないわけでね。やっぱり終わりなき日常が続いていくのです。芸能人や冒険家、世界のトッププレーヤーとかは別ですけどね。
 そんなことをやんわりと伝えてくれる映画でした。地味な映画ですけど、悪くないと思います。文字通り、「人生は地味だけど悪くない」って感じの映画でしたしね。

  


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