57年ぶりに返ってきたリング
■ある葬儀の風景
アクロンに住むジョー・レペラは10月8日の朝、何気なく読んでいた新聞で懐かしい名前を見つけた。
「シャロン・コーディントン・ゲイナー…?」
苗字は変わっているが、シャロン・コーディントン。忘れもしない、ハイスクール時代に情熱を傾けた女性の名前だ。あれからもう何十年たったのだろう。ジョーは今年で75歳。12月に長年連れ添った妻のビッキーを亡くして以来一人で暮らしていたジョーは、寂しさも手伝ってか不意に感傷的な気持ちに襲われた。
「目に留まってしまった以上、礼儀だよな。礼儀。」
ジョーはそう自分に言い聞かせながら、新聞の死亡記事を破ると上着のポケットに突っ込み、玄関へ出て行った。
葬儀はオハイオ州のバーバートンにある斎場で行われていた。会場の入り口に近づくと懐かしい顔が近寄ってくる。ビルだ。ビル・ゲイナー。シャロンの夫。彼は葬儀に参列に来たこの男がジョーだとすぐわかったようだった。
型通りの会話がひとしきり続いた後、ビルは唐突にジョーに切り出した。
「ジョー、渡したいものがあるんだ。」
「なんだい?」
「いいから、手を出してくれ。」
ジョーが恐る恐る手のひらを差し出すと、ビルはポケットから鈍い光を発するリングを取り出し、彼の手の中へそっと置いた。
「クラス…リング?」
「うん。君のものだろう?妻が生前、もし自分の葬式に彼がやってきたら、このリングを返してあげてほしいと言っていたんだ。大事なものだろうからってね。」
「これは…。そう、もう…57年前、私が彼女にあげたものだ。卒業の記念に、とね。」
しばし沈黙が流れた。
「ありがとう、ビル。」
■クラスリングは大事な卒業の記念
…っていうニュースがありました。出来事の概要は大体上記の通りです。シャロンさんがジョーのリングをずっと大事に持っていたわけはわかりません。大事なものだからいつか返さなくちゃと思っていたのか、結婚しても気になる人だったからなのかは今となっては本人のみぞ知るところですね。
ちなみにクラスリングとは一般的に学校の紋章や卒業年度を刻んだ指輪で、在学時の関係を大事にしてずっとつけ続ける人もいるらしく、交際中の男女が互いにリングを交換してつけることもあるとか。取材に対してジョーはこうコメントしています。
「彼女の家族を賞賛しますよ。彼らはとても気持ちのよい、理解のある人たちでした。」
ま、ね。妻から「昔の彼氏にもらった記念のリングを返しておいてくれ」って言われて、喜ぶ夫はあんまりいないでしょうしね。やっぱり信頼関係なのかしら。素敵な夫婦関係に乾杯。
<ネタ元:UPI.com>
2 Responses so far
10月 28th, 2009
19:52
なんだかジーンとしました。
映画になりそうです。
きっとシャロンさんは一生ジョーのことが忘れられなかったのでしょうね。
そしてきっと自分の葬式にはジョーが来てくれると信じていたのですね。
そしてほんとうにジョーは来てくれたのですから
やっぱりシャロンさんがジョーを愛していたように
ジョーもシャロンさんを愛し続けていたように思います。
ジョーは若い時代の思い出、ビルは長い人生のパートナー。
すてきなお話でした。
10月 29th, 2009
00:37
>penpen様
>ジョーは若い時代の思い出、ビルは長い人生のパートナー
そうです!その言い方がすごくしっくりくると言うか。その言葉が
うまく出てこなかったんです。
学生時代の恋ってやっぱり特別なものがあるのかも知れませんね。
コメント、ありがとうございました。
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