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ブロガーインタビューvol.3:なんでも評点

By ono   2008年7月27日


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 海外面白系ニュースを扱うブロガーの方にその手法や思いをインタビューしてみようという日曜企画、第3弾です。今回は書籍化も果たした超有名ブログ、「なんでも評点」からミッキー大槻さんにお話を聞いてみたいと思います。人気ブログを運営する原動力とは…?

portrait2007.jpgブロガーインタビューvol.3
なんでも評点:ミッキー大槻さん
http://rate.livedoor.biz/

■「なんでも評点」というタイトルの由来は何ですか?
ネタに10段階の評点を付けるという趣向で始めたことによります。2004年の5月に「なんでも評点」を立ち上げた当初は、海外ネタを扱っていたわけではなく身近な話題を面白おかしく取り上げようとしていました。ブログのサイドバーにも明記してありますが、扶桑社から出ている「新しい単位」シリーズみたいなものを目指していました。しかし、そういうブログというのはなんだか中途半端で、ほとんど注目もされませんでしたね。

2004年の夏ごろから海外ネタ中心にシフトしました。評点システムもそのまま引き継いで海外ネタに無理やり、こじつけの評点を付けるというスタイルになりました。

しかし、評点項目(「はがゆさ」や「ありがた迷惑さ」など)をブログのカテゴリにもしていたため、いろいろと窮屈に思うようになり2007年の4月に評点を付けることを原則として廃止しました。

今年の2月に「なんでも評点」の書籍版である『世界のありえな~い100選』が発売されたのですが、書籍の方では評点を3項目5段階式で復活させました。また、今年の7月9日以降はブログの方でも、装いも新たに5項目のレーダーチャート式で評点を復活させました。ま、評点自体にあまり深い意味はないのですけどね。

■ブログを始めた時期を教えてください。
質問1への回答として書いたように、「なんでも評点」を始めたのは2004年の5月のことでした。それ以前にも、HPやブログをいくつか立ち上げたことはありますが、あまり注目も浴びず長続きしませんでしたね。

■どういうきっかけで始めたんですか?
お堅い分野の翻訳を生業としているのですが、その反動みたいなものです。最初のうち海外ネタを扱おうとしなかったのは、単に海外のニュースを翻訳しているだけだと本業の延長みたいで気分転換にならないと思ったせいです。

海外ネタにシフトしてからも、ソースを忠実に翻訳しただけの記事はほとんどありません。あくまで海外の珍ニュースを題材にして読み物を書くというスタンスで続けてきました。ソース記事の行間を読み、ソースに書かれていないことを決め打って補足しているのは毎度のことですし、意外性や逆説性が際立つような話の展開に持っていくように心がけています。一見無関係な情報を加えることもよくあります。

■その日のニュースを選ぶ際の基準になるポイントって何でしょうか。
大手メディアはもちろんのこと他のご同業ブログ/サイトとも被りにくいネタを選ぶというのが第一ですね。後は、面白い読み物になりそうなネタであるかどうか。これはつまり、私自身が楽しめるネタであるかどうかということになります。

しかし、確実にアクセスを稼げそうなネタであれば、私自身の関心や興味とは無関係に取り上げることもありますねえ(具体的にはエロ系には、そういうネタが多いです)。多少自分に妥協しても、たくさんの人に読んでもらえたら、やりがいを感じるわけですから。

■今まで記事にしてきた中で、一番面白かったと思うニュースを教えてください。
あえて1つだけ選ぶとすれば、2006年の3月に取り上げた

透明人間になる薬を体中に塗布して自信満々の男、いとも簡単に撃たれて死す
http://rate.livedoor.biz/archives/50195200.html

の話でしょうか。質問4で答えた条件(他所と被らない&自分自身が楽しめる)を完全にクリアしていますからね。
もう1つ選ぶなら、

“超人”は実在する ― 現時点で100人の存在を医学的に確認、うち1人は心臓疾患が自然治癒し生後5ヶ月で十字懸垂
http://rate.livedoor.biz/archives/50386369.html

でしょうか。
ネタ自体は実に希薄な情報しかなかったのに読み物として最も味付けが上手く行った例の1つとして、

「世界を救うことを宿命付けられたドラゴン、それが僕の真の姿」と言い残し、短剣2本を携えて家出した少年
http://rate.livedoor.biz/archives/50328310.html

も挙げておきましょうか。上記3つは『世界のありえな~い100選』にも収録されているわけですが。

「なんでも評点」では珍ニュース系とは別に、変わった実験や学説、調査結果などをネタにしたコラム風の記事も書いています。その中で一番自分でも気に入っている記事は、

落ちて死ぬ寸前の人が見るスローモーション、年齢と共に加速していく歳月の経過 ― “記憶の密度”という説明
http://rate.livedoor.biz/archives/50500701.html

でしょうか。

■ブログをやってて印象深かったできごとはありますか?
ブログの書籍化でしょうか。『世界のありえな~い100選』が宙出版から出版されることが決定するより1年以上前に、別の出版企画が持ち上がっていました。ベストセラーも出している、ある小説家がじきじきに声をかけてくださったのでした。

しかし、その作家が引き合わせてくれた某出版社の編集者とのコミュニケーションが上手く行かずお流れになりました。それはそれなりに印象深い出来事でした。もちろんネガティブな面を含めて“印象深い”という意味ですよ。

もう二度と出版話はごめんだとさえ思っていたのですが、昨年の夏ごろに宙出版の青年編集者(当時編集部で最年少とのことでした)からメールで連絡があり、上記(質問5)の「世界を救うことを宿命付けられたドラゴン」の話に何といえない余韻を覚えたことなどが綴られていました。それを読んで、やっぱり出版話もいいかなあと思い直した次第です。

あとは、「なんでも評点」で取り上げた話がフジTVと日テレの某番組でたびたび再現ドラマ化されていることも印象深いですねえ。

■ライバル視しているブログと目標にしているブログ(もしくはサイト)。それぞれ、もしもあれば教えてください。
海外珍ニュース系にシフトするときに目標にさせてもらったのは、X51.orgとAzozですね。X51.orgにはネタの深さ、Azozには文の運びの上手さを学ばせてもらいました。しかし、残念なことに、どちらも今は更新されていません。更新されなくなった理由は明らかではありませんが、やはり「アクセスの割りに見返りが少なすぎる」ことにあるのではないかと想像しています。

個人的に好きな同業サイトの筆頭は、なんといっても中国語ソースというネタの宝庫を持っているHeavenですね。エグイ話をさらりとした文章で綴る語り口も魅力ですね。

■今後の抱負、野望などがあれば聞かせてください。
海外ニュース系で独自のものがあるサイトというのは、趣味で続けられるものではないですね。だから、かつては圧倒的なアクセスを集めていた有名どころが次々と更新を停止していったのだろうと思っています。やはり、それだけ多くの人に情報を提供している個人サイトの運営者は身を削っているわけですから、経済的に報われないと続けていけるものではないのだろうと感じています。

人気を集めている個人サイトが正当なかたちで経済的に報われるシステムというものが存在しないと、この世界は先行きが明るくありませんね。

私の場合も、ネタ選びに苦しむのは毎回のことですし、読み物仕立てで記事を書いているので、あまり更新頻度を上げることはできません。本業だけに専念してブログをやめることも何度も考えました。特に痛かったのは、Google Adsenseの収入がシステム変更に伴い、ピーク時の10分の1に低下したことですね。

その時期と相前後して書籍が出たわけで、そっちに期待したのですが・・・本の売れ行きは苦戦しています。まあしかし、懲りずにまだ本をもう1冊出したいという野望を密かに抱いていたりします。質問5への回答でも書きましたが、珍ニュース系以外にも「変わった実験や学説、調査結果などをネタにしたコラム風の記事」も書いてきたわけです。今度はこれらをリライトして本にしたいなあ、と。

■ブログ以外での最近のマイブームってありますか?
昨年暮れに長年の自動車生活をやめて、自転車生活に移行したことくらいでしょうか。

■最後に、ブログを始めてみたい人にアドバイスをお願いします。
私にとってブログというのは、ただのツールに過ぎないんですよね。自分がいわゆるブロガーだとさえ思っていません。

私に言わせれば、ブログというのはWeb サイトを簡単に作って更新できる仕組みに過ぎないわけです。ただし、仕組みがあっても入力がなければ出力は生まれません。

仲間内でブログを行き来するだけなら大げさに構える必要もないわけですが、人気ブログを作りたいという野望を持っている人の場合は、自分にしか提供できない情報があるかどうかが最も重要なポイントになるでしょうね。

どうもありがとうございました!

 ということで、「なんでも評点」のミッキー大槻さんでした。実際に「なんでも評点」を読むとわかりますが、本職が翻訳のお仕事ということもあって、その文章の構成力は素晴らしいです。
 一方で自分の感じる面白さと読者の興味・関心とのバランスをうまく保つことの重要性、記事を読み物として完成させるという手法など、書き手がどこまで気を遣っているのかという問いをブロガーに対して投げかけられているようにも感じました。続けていく中で人気を集めたいという思いがあるなら、それだけのことはしなければいけないという覚悟が必要なのかもしれません。
 「人気を集めている個人サイトが正当なかたちで経済的に報われるシステムというものが存在」する必要性、というのも、その完成度ゆえにTVなどで記事を盗用された経験を多く持つ筆者ならではの苦悩なんですね。一愛読者としてはそうした問題がクリアされて、少しでも長く「なんでも評点」が続くことを願っているのです。
 さて、次回は8月3日、「世界の三面記事・オモロイド」さんです。お楽しみに!

日曜企画:ブロガーインタビュー
vol.1 「どうでもいいこと」:のぜきさん(7月13日)
vol.2 「HEAVEN」:チキータさん(7月20日)


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